愛犬や愛猫が突然嘔吐や下痢をしてしまうと、とても心配になりますよね。これらの症状は、動物病院を訪れる際の最も多いものの一つです。
嘔吐や下痢そのものはそれほど珍しいことではありません。ただし、軽く考えて放置してしまうと、体調が悪化して深刻な病気につながることもあります。そのため、症状によっては早めに動物病院を受診することが大切です。
今回は、犬や猫の嘔吐・下痢の主な原因について詳しく解説し、飼い主様が知っておくと役立つポイントや対処法をご紹介します。
■目次
1.犬と猫の嘔吐・下痢の主な原因
2.危険信号と受診のタイミング
3.診察・治療について
4.予防と日常の注意点
5.まとめ
犬と猫の嘔吐・下痢の主な原因
犬や猫が嘔吐や下痢をする原因はさまざまですが、大きく分けると以下のような理由が考えられます。
1. 食事
普段食べ慣れないものを与えたり、急にフードを変更したりすると、消化器官が刺激を受けて嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。特に人間の食べ物や脂っこい食事は注意が必要です。
また、食物アレルギーや特定の食材に対する不耐性が原因で、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。
2. 感染症
ウイルスや細菌、寄生虫などが原因で胃腸に感染が広がり、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。特に子犬や子猫は免疫機能がまだ発達していないため、感染症による症状が深刻になりがちです。パルボウイルス感染症や寄生虫(回虫、鉤虫など)が代表的な例です。
3. ストレス
犬や猫は環境の変化に敏感で、ストレスが原因で消化器症状を示すことがあります。引っ越しや新しい家族の加入、留守番が増えた場合など、精神的な負担が嘔吐や下痢を引き起こす原因になることがあります。
4. 中毒
犬や猫にとって有害なものを誤って口にしてしまった場合にも嘔吐や下痢が起こることがあります。例えば、チョコレート、玉ねぎ、アルコールなど、人間には無害でも犬や猫には毒性を持つ食品があります。また、観葉植物や薬品の誤飲にも注意が必要です。
5. 腸閉塞
犬も猫も異物の誤食による腸閉塞が多くみられます。
犬の場合は、おもちゃや靴下、果物の種、ナッツ類など、原因は様々です。
猫の場合は、おもちゃ、ひも、裁縫やミシンに使う糸、ヘアバンドのゴムなどが腸閉塞の原因になります。
症状は、繰り返される嘔吐、食欲不振、元気消失です。自然に回復することはないので、早急な対応が必要です。
6. その他の病気
嘔吐や下痢は、膵炎、腎臓病、肝臓病、甲状腺機能亢進症など、他の病気に関連する症状として現れることがあります。そのため、嘔吐や下痢が続く場合は、これらの基礎疾患の可能性を考慮する必要があります。
危険信号と受診のタイミング
嘔吐や下痢が見られたとき、「すぐ病院に行くべきなのか、それとも様子を見ても大丈夫なのか」と迷うことはありませんか?ここでは、具体的な受診の目安について分かりやすく解説します。
<すぐに病院に行くべき場合>
以下のような症状が見られた場合は、迷わず動物病院を受診してください。早期対応が、命を守る第一歩です。
・嘔吐物や便に血が混じっている
嘔吐物や便に血が混じる場合、消化器官の出血や感染症が疑われます。特に鮮やかな赤い血や黒っぽいタール状の便は注意が必要です。これらの症状は重大な病気のサインであることが多いため、放置せずに受診しましょう。
・嘔吐や下痢が何度も続く
短い時間に何度も嘔吐や下痢を繰り返すと、体内の水分や電解質が急速に失われ、脱水症状を引き起こすリスクがあります。特に高齢の犬や猫、小型犬は注意が必要です。
・食欲がまったくない
普段は食欲旺盛な愛犬や愛猫が、まったく食べ物に興味を示さない場合は注意が必要です。何らかの病気が進行している場合があります。
・元気がなくぐったりしている
元気がなく、ぐったりしている状態は緊急性が高いことがあります。普段と明らかに様子が違うときは、迷わず受診してください。
・お腹が異常に膨らんでいる
お腹が異常に膨らんでいる場合は、腸閉塞やガスの蓄積などの深刻な状態が考えられます。
<少し様子を見てもよい場合>
軽い嘔吐や下痢であっても、以下のような場合であれば少し様子を見ても問題ないことがあります。
・一度だけの嘔吐や下痢で、元気や食欲が普段どおりある。
・環境の変化や食べ過ぎが原因であることが明らかで、症状が軽い。
・嘔吐物や便に血が混じっていない。
ただし、症状が続く場合や、改善の兆しが見られない場合は早めに病院へご相談ください。
<子犬・子猫の場合は特に注意を>
子犬や子猫は免疫が未発達で体力も少ないため、嘔吐や下痢、食欲不振の影響を受けやすく、脱水や低血糖になりやすい傾向にあります。以下のような場合は迷わず受診してください。
・嘔吐や下痢が1回でも見られた。
・食欲がなく、ぐったりしている。
・体温が正常範囲を超えている、または低い。(38℃~39℃が正常範囲です)
子犬・子猫は命に関わる感染症(例:パルボウイルス感染症、寄生虫感染)にかかりやすいので、軽視せずに早めの受診を心がけましょう。
診察・治療について
嘔吐や下痢の診察では、まず原因をしっかりと特定し、それに基づいた適切な治療を行うことが重要です。ここでは、動物病院での一般的な診察の流れや治療、その後のご自宅でのケアについてご説明します。
<診療>
1. 問診
まず、飼い主様から詳しくお話を伺います。嘔吐や下痢が始まった時期や頻度、食事内容、直近での環境の変化など、些細なことでも教えていただくことで診断の手がかりになります。
2. 身体検査
続いて、全体的な健康状態を確認します。体温を測定し、脱水の有無をチェックしたり、腹部を触診したりすることで、異常がないかを探ります。また、犬や猫の様子や反応も診察のポイントになります。
3. 追加検査
必要に応じて以下のような検査を行います。これにより、病気の原因をより正確に特定できます。
・血液検査:感染症や内臓機能の異常を確認。
・糞便検査:寄生虫や細菌感染の有無を調べる。
・エコー検査やレントゲン検査:腸閉塞や腫瘍、内臓の炎症などを検出。
検査内容は愛犬や愛猫の状態によって異なりますが、詳細な診断が早期治療の鍵となります。
<治療>
治療方法は診断に基づいて決定されますが、感染症や寄生虫が原因である場合は薬物治療が行われます。食事の問題やアレルギーが原因であれば、普段の食生活を見直して様子を見ます。また、腸や内臓に問題がある場合は、それに応じた治療を行います。
嘔吐や下痢が続いたことにより脱水状態に陥っている場合は、点滴を使用し、不足した水分や電解質を補うことで、体力の回復をサポートします。また、対症療法として整腸剤、下痢止め、嘔吐止めが処方されることもあります。
<ご自宅でのケア>
・水分補給
脱水症状を防ぐため、飲みやすい温度の新鮮な水を常に用意し、飲む量を観察しましょう。必要に応じて、動物用の経口補水液を獣医師に相談して使用してください。
・食事の変更
獣医師の指示に従い、食事を控えるか、消化に優しい特別食や療法食を少量ずつ与えます。普段のフードに戻す際も、段階的に切り替えましょう。
・環境整備
愛犬や愛猫がリラックスできる環境を整えてください。飼い主様の優しい声かけも安心材料になります。
予防と日常の注意点
愛犬や愛猫の嘔吐や下痢を未然に防ぐためには、日常の健康管理が欠かせません。ちょっとした工夫や心がけが、愛犬や愛猫の健康を守る大きな力になります。ここでは、飼い主様が日常で取り組める具体的なポイントをご紹介します。
1. 適切な食事管理
適切な食事管理は愛犬と愛猫の健康を守る基本です。市販の総合栄養食を基準に、年齢や体質に合ったバランスの取れたフードを選びましょう。新しいフードに切り替える際は、1週間ほどかけて徐々に進めるようにしてください。
また、塩分が多い食べ物やチョコレート、玉ねぎなど、犬や猫に有害なものは与えないように注意しましょう。
2. 清潔な環境を整える
清潔な環境を整えることは、ペットの健康管理において重要です。食器や水皿は毎日洗浄し、新鮮な水を常に用意しましょう。
また、特に猫の場合はトイレが汚れているとストレスを感じやすいため、こまめな清掃が必要です。犬の場合も、排泄エリアを清潔に保ちましょう。
3. ストレス管理
ストレスは消化器官の不調を引き起こす原因のひとつです。愛犬や愛猫がリラックスして過ごせるような環境を整えたり、大きな変化がある場合は少しずつ慣れる時間を設けたりするなど、愛犬や愛猫のペースを尊重することを心がけましょう。
また、適度な運動や遊びの時間を設けてストレスを発散させることも、心身の健康につながります。
4. 定期的な健康診断
健康診断は、症状が出る前に異常を見つけるための有効な手段です。年に1回の健康診断で、病気の早期発見の可能性が高まります。
子犬や子猫、また高齢の犬や猫の場合は特に体調の変化が出やすいため、半年に1回の健康診断がおすすめです。
まとめ
嘔吐や下痢は犬猫にとってよくある症状のひとつですが、その背景にはさまざまな原因が潜んでいることがあります。日頃から適切な食事や環境の管理、ストレスを軽減する工夫を取り入れることで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
また、症状が見られた場合には、まず落ち着いて愛犬や愛猫の様子を観察し、必要に応じて動物病院を受診してください。
飼い主様が普段の様子をよく知り、早期に異変に気づくことが、健康を守るための第一歩です。愛犬や愛猫との健やかな日々をサポートするために、日常的なケアを心がけましょう。
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