愛犬や愛猫の歯周病は、単なる口のトラブルではなく、全身の健康にも影響を及ぼす病気です。進行すると口臭が強くなるだけでなく、歯ぐきの炎症や歯のぐらつきが生じ、最悪の場合、歯が抜け落ちてしまうこともあります。さらに、歯周病菌が血流に乗って全身を巡ることで、心臓や腎臓などの重要な臓器に悪影響を及ぼすおそれもあります。
しかし、歯周病は早期発見と適切なケアを行えば、予防・管理が可能な病気でもあります。今回は、歯周病の基礎知識から予防法、治療の選択肢まで詳しく解説します。
■目次
1.歯周病とは?
2.歯周病の発見のポイント
3.診断と治療について
4.予防と日常ケア
5.安心して通える「かかりつけ医」を目指して
6.当院の取り組み
7.まとめ
歯周病とは?
歯周病とは、歯垢や歯石の蓄積によって歯ぐきが炎症を起こし、進行すると歯を支える骨が溶けてしまう病気です。
<歯周病の進行度>
歯周病の進行度は、以下のように分類されます。
・軽度(歯肉炎):歯ぐきが赤くなり、歯磨き時に出血することがある
・中等度(初期の歯周炎):歯ぐきが腫れ、歯石の付着が目立つようになる
・重度(進行した歯周炎):歯がぐらつき、強い口臭や膿が見られる
<歯周病を放置するとどうなる?>
歯周病をそのままにしておくと、歯が抜けるだけでなく、細菌が血管を通じて全身に広がり、心疾患・腎疾患・肝疾患などの健康被害を引き起こすおそれがあります。特に高齢の犬や猫は免疫力が低下しやすく、感染症のリスクも高まるため、早めのケアが大切です。
<犬や猫の年齢との関係>
一般的に、3歳以上の犬の約80%が何らかの歯周病を持っているといわれています。特に小型犬や猫は歯磨きがしづらく、歯石がつきやすいため、若いうちからの予防が重要です。年齢を重ねるごとに症状が悪化しやすくなるため、シニア期に入る前からケアを習慣化しましょう。
歯周病の発見のポイント
歯周病は進行がゆっくりで、初期段階では目立った症状が少ないため、飼い主様が気づかないことが多い病気です。「少し口が臭う」「歯石がついている」と思っていても、放置してしまうケースが多く、気づいたときにはすでに重症化していることもあります。
<日常的なチェックポイント>
以下のような症状が見られたら、歯周病のサインかもしれません。
・口臭が強くなった
・歯ぐきが赤く腫れている
・歯石が歯にびっしりと付着している
・食べにくそうにしている、片側で噛む
・口元を気にするしぐさをする
・よだれが増えた
<トリミングやフィラリア検査時のチェックも有効>
トリミングや健康診断の際に、獣医師やトリマーが歯の状態を確認することで、歯周病の早期発見につながることがあります。普段から口の中をしっかり見るのが難しい場合は、こうした機会を活用しましょう。
<定期健診での早期発見が鍵>
歯周病を防ぐためには、定期的な健診が欠かせません。少なくとも年に1回、できれば半年に1回の頻度で診察を受け、必要に応じて歯石除去やクリーニングを行いましょう。
診断と治療について
歯周病が疑われる場合の診断と治療の流れについてご説明します。
<診察の流れ>
まず、問診と視診で、食事の様子や口臭、よだれの状態を確認します。必要に応じてレントゲンを撮影し、歯根や顎の骨の状態を詳しく診断します。
<治療方法>
進行度に応じて、以下のような治療を行います。
・軽度(歯肉炎):スケーリング(歯石除去)や抗炎症剤の投与
・中等度(歯周炎初期):スケーリングやクリーニングに加え、抗生物質や抗炎症剤を併用
・重度(進行した歯周炎):状態に応じて抜歯を検討
重度の歯周病では、歯周ポケットの奥に細菌が侵入し、炎症が進行すると歯を残しても根本的な改善が難しくなることがあります。そのため、感染の拡大を防ぐために抜歯が必要になる場合があります。
<麻酔下での治療について>
犬や猫は人のように「じっと口を開けて治療を受ける」ことができません。そのため、歯科治療は麻酔下で行うのが一般的です。当院では、事前に血液検査や健康診断を実施し、安全性を十分に確認したうえで治療を行います。
<術後のケア>
治療後も口腔ケアを続けることが大切です。特に抜歯後は、傷口の感染予防として抗生剤を使用し、一時的に柔らかいフードを与えるなどの配慮が必要です。また、定期的な歯磨きやクリーニングを続けることで、再発を防ぐことができます。
このように、歯周病の管理には継続的なケアが欠かせません。診察から治療、経過観察までを同じ獣医師が担当することで、より適切なケアが可能になります。信頼関係が築かれることで、日頃のケアについても気軽に相談しやすくなります。
予防と日常ケア
歯周病は治療だけでなく、日頃のケアを習慣にして予防することが大切です。
<歯磨きの習慣をつける>
歯磨きは最も効果的な歯周病の予防法です。最初は短時間でもいいので、毎日続けることが大切です。少しずつ慣れさせることで、無理なく習慣化できます。また、歯周病予防には、次のようなケア用品が役立ちます。
・歯ブラシ:犬・猫専用の柔らかい毛のものを使用
・歯磨きシート:歯ブラシが苦手な子におすすめ
・デンタルガム:噛むことで歯垢除去をサポート
・デンタルジェル・スプレー:歯磨きが難しい場合の補助アイテム
<食事による工夫>
フードの種類や成分は、歯の健康に影響を与えます。デンタルケア用のフードは、噛むことで歯の表面をきれいにする効果が期待できます。また、水分を十分に摂ることで口内の汚れが流れやすくなるため、こまめに水を飲ませることも大切です。
<定期的な歯科検診>
定期的な歯科検診を受けることで、歯周病の早期発見や予防につながります。特に小型犬や高齢の猫はリスクが高いため、年に1〜2回の歯科検診をおすすめします。
安心して通える「かかりつけ医」を目指して
当院では、診察から治療、術後のケアまで同じ獣医師が担当し、長期的な健康管理を行っています。歯周病は継続的なケアが必要な病気のため、一貫した診療体制により、治療経過や体調の変化を把握しやすく、適切な対応が可能になります。
また、飼い主様との信頼関係を大切にし、治療方針やケア方法を丁寧に説明することを心がけています。
当院の取り組み
治療後も定期的なチェックを行い、歯周病の再発を防ぐための経過観察を重視しています。
また、トリミング時やフィラリア検査時にも歯の状態をチェックし、異常が見つかった場合は必要に応じて飼い主様へアドバイスを行っています。
さらに、毎年春の健康診断に合わせて、歯科キャンペーンを実施しています。ご希望の方には、歯石除去や歯科検診のご案内を行い、口腔ケアの大切さをお伝えしています。特に、麻酔をかけたクリーニングが必要かどうかの判断にも役立つため、気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
歯周病は、放置すると歯のトラブルだけでなく、全身の健康にも影響を及ぼす病気です。しかし、日頃のケアと定期的なチェックを行うことで、予防や早期発見につなげることが可能です。また、かかりつけの動物病院を持つことで、定期的な健康管理がしやすくなり、歯周病の早期発見・早期治療につながります。
当院では、診察から治療、経過観察までを一貫して担当し、最適なケアの提供に努めています。もし、口臭が気になる、歯ぐきが赤く腫れている、食べづらそうにしているといった症状が見られた場合は、お気軽にご相談ください。
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