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猫の慢性腎臓病について┃気づいた頃にはかなり進行していることも

猫の慢性腎臓病は長期間に渡って徐々に腎機能が低下していく進行性の病気です。高齢の猫ちゃんを中心に多く見られ、15歳以上の80%は罹患していると言われています。症状が現れる頃には腎機能の約75%が障害されているため、早期発見と治療が重要です。

そこで今回は猫の慢性腎臓病について詳しく解説していき、早期発見に役立てていただければと思います。

 

■目次
1.猫の慢性腎臓病とは
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ

 

猫の慢性腎臓病とは


慢性腎臓病は、以下のいずれか、または両方を満たす状態と定義されます。

1.組織学的、血液検査、尿検査、画像診断などで証明された腎臓のダメージが3か月以上持続している。
2.糸球体ろ過量(腎臓がどれくらい働いているかを示す数値)の低下が3か月以上続いている。

 

症状


特徴的な症状は多飲多尿です。腎臓の機能低下により、老廃物を十分にろ過できず、薄い尿を大量に排泄します。そのため、脱水症状を防ぐために水を多く飲むようになります。指標として、1日の飲水量が体重1kgあたり60ml以上の場合、多飲とされます。

その他には、食欲低下、痩せてくる、毛艶が悪くなる、嘔吐、元気がないなどの症状がみられます。

 

原因


慢性腎臓病は、特発性と呼ばれる原因不明なものが多いですが、腫瘍、尿結石、高血圧、ウイルス感染(特にFIP)などが原因となることもあります。

遺伝的素因も関係するため、両親や兄弟に腎臓病の子がいる場合には注意が必要です。

 

診断方法


慢性腎臓病の診断には、主に以下の検査が行われます。

血液検査
BUNやクレアチニンの上昇を確認することが一般的ですが、これらの値は腎機能が75%以上障害されないと上昇しません。そのため、初期発見にはSDMA(腎機能が40%障害されると上昇)が用いられます。他にも、電解質、リン、カルシウムの値も計測し、体のミネラルバランスに異常が起きていないかも確認します。

尿検査
尿比重や尿蛋白クレアチニン比を測定して腎機能を評価します。

エコー検査
腎臓の形態や大きさ、内部構造の異常、腫瘍の有無を確認します。

 

治療方法


慢性腎臓病は進行性の病気なので、完治はほぼ不可能で、治療の目的は、進行をできるだけ遅らせ、愛猫の生活の質を維持することにあります。

最も重要なのは脱水の補正で、軽度の場合は通院もしくは自宅で週に数回の皮下点滴を行います。重度の場合は入院での静脈内点滴が必要となり、輸液剤へカリウムなどを添加することで電解質の補正も行います。
当院ではご希望の方には往診での点滴も対応しております。気になる方はお気軽にご相談下さい。

また、療法食も重要で、塩分やタンパク質の摂取量を減らすことで腎臓への負担を軽減します。これにより、腎機能のさらなる低下を防ぎ、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。

 

予防法やご家庭での注意点


慢性腎臓病では体内の水分が多量の尿として排出されるため脱水が起こりやすくなります。そのため、新鮮な水や流れる水など、猫ちゃんの好みに合わせた水を用意し、自発的な飲水を促しましょう。また、ドライフードをふやかしたり、ペースト状のパウチを与えたりするのも有効です。

特に5歳以上の猫は、SDMA測定を含む定期的な血液検査を行い、早期発見に努めましょう。

 

まとめ


慢性腎臓病は初期段階で気付き、できるだけ早く治療を始めることが非常に重要です。食欲不振や多飲多尿などの症状が現れる頃にはかなり進行してしまっているため、少しでも「いつもと違うな」と感じることがありましたら、早めに検査を受けさせてあげるようにしましょう。

 

愛知県名古屋市名東区の上社ペットクリニック
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